備忘録

健やかに 朗らかに

ライブ処女をKinKi Kidsに捧げた女の話

 

私は生まれてこの方コンサート・ライブの類いに参戦したことが全く無い。特段好きなアーティストがいた訳でも無いし、身内でライブやフェスにバリバリ参加してる人もいなかったのでそういうコンテンツに関わる機会がそもそも無かったのだ。

そんなエンタメとはまるで無縁だった私がある日突然KinKi Kidsという存在に出会い、あれよあれよという間に沼に堕ち、気付けば人生ではじめてのコンサートをKinKi Kidsに捧げていた日の記録を残したいと思う。

 

 

2022年1月1日

私は電車に揺られながら現地東京ドームに向かっていた。今回のコンサートは元日1回限りなのでおそらく相当の倍率だったであろう。当然最初の当落は落選したが、最後の砦である制作開放席でなんとか1枚当選してくれた。名義、本当にありがとう。よくやった。お前は本当によくやった。

駅ですれ違う人間が皆同じ場所を目指してるのではないかと錯覚してしまう。比較的大きめなカバンを持っている人を見かけると中にうちわでも入ってるのではないかと思ってしまってならない。完全に浮かれぽんちのオタクの図である。

 

そうこうしている間に水道橋駅に着いた。橋を渡り、無数の人間がどんどんドームに吸い込まれていく。駅前では"チケット譲ってください"というビラを掲げた人もいた。全てが初めての光景でとても新鮮だった。ここにいる人達はみんなみんなKinKiファンで、彼等のデビュー25周年のスタートを晴れやかな気持ちでお祝いするために集まった同志なのだと思うともうそれだけで目頭が熱い。

道行く人の中にはKinKiのロゴが入ったトートバッグやマフラーなど過去のコンサートグッズを身につけた人がたくさんいて、それが凄く羨ましかった。羨ましかったけど、この人達がいてくれたおかげでKinKiがKinKiを続けてくれて、こうして私も彼等と出会うことが出来たんだなと思うとただただ感謝しかない。オタクはオタクを救う。

 

東京ドームシティのゲートを潜るといよいよドームが目の前に来た。一気に緊張してきた。前置きでエンタメ関連とは全く無縁だったと書いたが、本当に無縁過ぎて正直東京ドームすらまともに行ったことがない(幼少期に一度野球観戦で来たことはあったそうだがまるで記憶がない)私はこの広いドームで迷わないか心配だったが、なんとか入口ゲートまでたどり着けた。誘導の警備員さんが入口付近で「○○ゲートの方はこちらです〜」と案内してくれたのでスムーズに中まで入れたのである。年始なのにも関わらずこうして私達のためにご尽力していただき本当に頭が上がらない。ありがとうございました。

入口で検温と手荷物検査をした後チケットを発券し、回転扉(これが地味に怖い)の先を行くと幕からチラッとステージが見えた。広い。本当に広かった。

「あ、自分 ライブに来たんだな」と改めて感じた瞬間だった。

ドーム内に入り席を探す。当選メールが来た時は22ゲートと表記されていたのでてっきり天井席は回避したものだとばかり思っていたが、蓋を開けたら普通に2階席だったのは笑った。己のクジ運なぞそんなもんだ。

2階席は傾斜がかなり急で怖い。降りる時は手すりに捕まってないと落ちそうだし、登る時はほぼ登山だ。実際、私の左隣に座っていたマダムは息切れしながら階段を登ってきていた。

会場内のBGMは何故かEnyaだった。開演前まで永遠に流れていた。会場入りが開演1時間前だったのと移動で鬼のように疲れたので申し訳ないが非常に眠かった。何故Enyaだったのだろう。いや、私はまだ知らなかっただけで実はこれはれっきとした東京ドームの公式BGMであり、開演前は当たり前のように流れるものなのかもしれない。東京ドーム初心者なので何か情報のある方は是非とも教えていただきたい。というか何故自分らの曲を流さない??と思っていたら右隣のお姉さんも同じことを言っていた。

ここで両隣のお姉様方のお話を少し挟む。結論から言うとどちらも歴戦の猛者であることは確かで、当然のように39コンやΦコンのペンラを取りだし「電池がもう限界……」と嘆いていた。私は沼に堕ちたのが2019年なのでペンラどころかコンサートグッズとやらを何も所持していない。"電池が〜"というレベルですらないのだ。ペンラが無いからと言って人権が剥奪されるわけではないが非常に申し訳ない気持ちでいっぱいだった。今年のコンサートはたくさんのグッズを、そしてオタクにもペンラのお恵みをどうかお願いしたい。切実に。

 

時計を見るともう開演まであと1分だった。チラホラと手拍子が始まる。DVDで見た光景だ。コロナ禍なので声は出せないが手拍子のリズムで分かる。KinKiを呼ぶ声が聞こえる。

 

その瞬間、パッと照明が消えた。辺りは真っ暗になりドーム一面が赤と青の眩い光でいっぱいになった。その光があまりにも綺麗で、思わずTopaz Loveの歌詩にある"誰か愛するネオンが綺麗"という言葉が思い浮かんだ。本当にその通りだと思った。「ああ ついに始まるんだ。わたし、本当にKinKi Kidsのコンサートを見られるんだ!!!」と思うと全身に鳥肌が立った。あの瞬間の高揚感は後にも先にも絶対に忘れないだろう。

 

ペンラの光に感動して既に目に涙を溜めているとドーム内にピアノの旋律が響いた。イントロの後に二人がスポットライトを浴びて登場する。

ステージはメインステージのみの構成で、ステージにはグランドピアノが1つぽつんとあり、その横にバーカウンターにありそうなカウンターチェアが2つ並んでいた。前日にカウコン、前々日にはジャニフェスと開催していた時にはセンターステージやムービングステージの他にメインステージも左右に2つほどあったが、今日のステージではその部分は全て撤去され客席に変わっていた。そうなると収容数としては一番多くなるのだろうか。本当にありがたい。そうしていただいたお陰でこうして私はこの場所にいることが出来たのだから。

ピアノとお二人の歌声のみがドームに響き渡る。美しい。そして音が本当に綺麗だった。今回はほとんどのメイン音源がグランドピアノのみで構成されたアコースティック・サウンドのコンサートだったため、二人の歌唱力の高さと"KinKiのコンサートは音響が素晴らしい"ということが如実に表れていたように思う。おそらくドームでこれだけの綺麗な音と歌声を届けられるのはKinKi Kidsしかいないのではないだろうか。まあ、私は現場未経験なので比較材料がまったく無いあたり何が言えるんだという話ではある。

ただ、東京ドームを下調べしていた時どの記事にも"音の悪さは折り紙つき"と書いてあったのを見ていたので、正直言うと開演前まで音響にはあまり期待をしていなかったがそれが完全に杞憂であったことは確かだ。なんなら舞台より響いてた。

それにしても、最初会場入りをしてステージを見た時は「ピアノがメインかあ。大人のコンサートだなあ」と思ってはいたがまさかピアノのみでのコンサートだとは思ってもいなかった。元々公演決定のお知らせ自体が開催の約1ヶ月半前だったこともあり、大掛かりなことをやろうとしても間に合わないということは分かっていたが、(公演決定後に光一さんもブログで話してたし。)演出に時間を割けられない代わりに己の歌唱力でドーム公演を成り立たせようとする二人のプロとしての心意気に改めて感銘を受けた。

勿論コンサートの完成度としては申し分なく、アカペラ感が強い分お二人の歌声を心ゆくまで堪能することが出来た。ファンとしてはこの上ない贅沢である。

 

※尚、これは後で分かるが盛大な伏線である。

 

1曲目は「新しい時代」だった。この曲は一度目の緊急事態宣言の際に剛さんが感じた感情を歌詩にのせてできた曲と言われている。最後の大サビの歌詩に"また会えるその日へ 抱き合えるその日へ"とあるのだが、ここはMVだと2年前のTKコンの映像が流れる(私はいつもここで泣き崩れる)のでその部分を歌われた時MVとこの状況を重ねてしまって情緒がおかしくなってしまった。

あのMVが公開された時は未知のウイルスによって日常の全てが塗り替えられてしまい、少なからず心身が疲弊していた時期ではあった。TKコンの映像が出てきた時も「このコンサートの頃は今こんなことになってるだなんて誰も思わなかっただろうな。"また会えるその日"って言ってくれてるけど、本当にその日は来るのかな。もしかしたらもう一生二人には会えないのかもしれないな……」と憂いては風呂で一人泣いていた時もあった。

だからこそ、今こうして二人が揃った姿をこの目で見ることが出来ているという事実に心の底から感動していた。1曲目なのに既に涙で前が見えない。天井席だったので双眼鏡を覗いても二人の姿は豆粒だったけど、確かに彼等はそこに存在していて、自分と同じ空間で歌っている。あのMVを見ていた頃の私には信じられなった光景だ。信じられないけど、間違いなくずっとこの光景を待ち望んでいたのだ。

心の中で何度も

「また会える"その日"をつくってくれてありがとう…ありがとう……」

と唱えた。

このコンサートに携わった全ての方々への感謝の気持ちが止まらない。チケット代だけでは普通に足りないので席の横にお布施用のBOXを設置してその都度万札をぶち込みたかった。

あと二人は何かイベントを開催する度に「お客さんのマナーがいい。みんなが頑張ってくれてるお陰でこうしてイベントが開催できる」と仰ってくれるが何よりも貴方達が常日頃感染症対策に努めて下さっているからイベント側も事務所もOKを出してくれるんですよ……!!!貴方達の力あってこそなんですよ!!!!と言いたい。どこまで謙虚なんですか。

 

しっとりと歌い上げた後「新しい時代が始まりましたね〜」という光一さんの声と共に1回目のMCが始まった。

最初に言っておくと、MCに関しては私の記憶力が皆無過ぎて断片的にしか覚えてないこともあり、この備忘録にはほぼ残せないことを許して欲しい。もう既にたくさんのオタクとライターさんがMCのレポを載せてると思うのでそちらを是非見ていただきたい。

 

MCは1曲〜2曲ごとに入れてる感じで合計すると7回ほどやってた。過去最多なのであろうか、これは。

それもあってか今回は曲数も少なめで全部で13曲。(内1曲はピアノアレンジ)時間で言うと2時間45分ほどだったと思う。ドームの使用時間が4時間だったのを見ていたので「少ない!!寂しい!!!!」と感じたが実際は本来の時間より30分押してたらしい。堂島P曰くMCが長いせいで。

そういえばMCが始まって早々、剛さんがカウンターチェアに座り「ま、座れば?」と光一さんに促し「貴方、そんなここを家のように……笑」と光一さんがニコニコしてる様子を見せられた時はさっそくKinKiのMCの洗礼を受けたなという気分だった。

 

お二人はMCの中で今回の開催に踏み切り、少ない時間で出来る限りの準備をしてくれたスタッフの方々、急な開催にも関わらず時間を作って自分達のコンサートを見に来てくれた我々ファンに向けての感謝を伝えてくれた。最初から最後までずっとずーーーっと伝えてくれていた。私は彼等と友達でも無ければ長い時間を共に過ごした訳でもないただの人間だが、そのお姿にお二人の"人柄"が感じられて「ああ、この人達のことを好きになれて本当によかったな」という気持ちに改めて気づかされた。

また、今年KinKi KidsはCDデビュー25年目に突入するということで、二人の口から何度も「今年は25周年だからね」という言葉を聞けたのがすごく嬉しかった。色々なことを考えている、それが全て叶うかはまだ分からないけど、もし全部叶ったら皆様にすごく喜んでいただけるとお話してくれた。2022年は安泰だ。

 

"お二人の人柄"というところで思い出したが、今回ピアノアレンジを担当された方(園田さん……ですね。覚えました。)への二人の気遣いにも"それ"が表れていたなと感じた。今回はピアノ1本でのコンサートということで、園田さん的にも相当のプレッシャーがあったのではないかと思う。(何様発言で申し訳ない)そこを二人は「間違えたらやり直せばいい!」「違うなあと思ったらイントロからやり直しましょう」というスタンスで笑って場を和ませてくれていたのだ。素敵な現場だなと思った。

そう、園田さんのハイライトと言えば断トツで銀色 暗号だ。

2曲目to Heart3曲目スワンソングMCを挟んで4曲目「雪白の月」の後。導入のMCの後にそれは起きた。当然のようにイントロの演奏が入るのだがそれが何故かお正月の歌だったのだ。最初は気付かず普通に聞いていたが段々「ん……?なんか様子が、、あれ、銀色 暗号ってこんなイントロだったっけ」と周りがザワザワし、KinKi含め会場全体がふふっとなってしまい演奏が止まってしまった。初めはKinKiはこの事を知ってると思ってたがまさか園田さんのアドリブだったとは。めちゃくちゃ面白かったし「うわあライブだなあ!」と感動もした。その後、気を取り直してしっかり完璧に歌い切ったKinKiも園田さんもまとめてすごかった。プロってすごい。

歌い切った後「一度お正月のイントロのままどこまで歌えるか」ということでお正月イントロVer.のまま1番まるっと歌っていたのもなんともシュールで楽しかった。イントロどころかさり気にBメロの部分も「お正月には〜凧あげて〜♪」と口ずさめるようなメロディを盛り込んでいて、面白いのは当たり前なのだが単純に園田さんの技術力に驚いた。プロってすごい(2回目)

銀色 暗号は二人の合作曲なのもあってか歌い終わった後「ええ歌やな」「ええ曲やわ」と2人してうんうん言い合っていたのも非常に微笑ましかった。余談だが私はKinKiの合作曲の中では銀色 暗号が一番好きなので今回(園田さんのお茶目のお陰で)かなり取り上げてくれて心の中ではカーニバル状態だった。マスクの中はだいぶ気味の悪い顔になっていたと思うのでその面ではコロナ禍で良かったのかもしれない。

 

そして、会場全体がかなり和やかな雰囲気になったあたりで光一さんのHappyBirthdayコーナーに移った。6曲目「もう君以外愛せない」を歌った後に剛さんの一声でステージに大きなケーキが登場する。ケーキを運んでくれたのは吉田建さんと堂島孝平P。サプライズゲスト?だったらしく光一さんはかなり驚いてる様子だった気がする。本来ならこの御二方は当然バンドメンバーとしてご参加される予定だったのだろう。本当に急な開催決定だったこともあり、なかなかお声がけが出来なかったのかもしれない。それでもこうして駆けつけて下さったのだから本当にお二人は愛されているなあと思う。(建さんは普通に3塁側でご観覧してたそう)

ハッピーバースデーソングの後に建さんから光一さんへ赤い薔薇の花束が贈られる。そういえばなんだかんだお誕生日をお祝いされている光一さんも、赤い薔薇を持った光一さんも実際にこの目で見るのは当たり前だが初めてだ。いつもはテレビ越しに何気なく見ていた光景だったのだ。そう思うと生きていると何が起こるか本当に分からないものだと感じる。まさしく"生きていると毎日夢が生まれる"だ。

次いで堂島Pから剛さんへ青い花束が贈られた。今年はKinKiの25周年アニバーサリーイヤーということで、それのお祝いを兼ねてとのことだ。その時剛さんが「え!僕ももらってええの?」と言ってた(と思う)のだが、自分のメンカラのお花だしどう見ても貴方のであることは間違いないはずなのにそう思わないというところに、もう非常に、あの、言葉で言い表せない感情でめちゃめちゃにされてしまった。剛さんにとって今日この日がどんな日であるか、改めて気づかされてしまった。まだまだ私は未熟者だ。勉強し直さなければならない。

お花渡しの後は記念撮影などをしていた。どうやらこの後今回のコンサートの模様がフォトブックになるそうで(光一さんのぶっ込みによりコンサート中に発表があった)そのための撮影だそうだ。

剛さんがカメラマンになったり、それを見て光一さんが「貴方ばっかり撮ってたら写れないでしょ」とカメラマンを交代したり(←この時オタクの感情はまためちゃめちゃにされてしまった)堂島Pにツーショットを撮ってもらったりと、その様子はなんだか親戚の集まりを見ているようで不思議な気分だった。過去のコンサート映像にも建さんや堂島Pの様子は映っていて、「みんなすごく仲良しなんだな。お互いを認め合ってるって感じがすごく伝わる。いい関係性だなあ」とは勿論思っていた。

でも実際目の当たりにすると御二方のKinKiへの眼差しが想像の何十倍も温かくて、多分その時の柔らかい表情やほわほわした声のトーンから感じ取れたのだと思うが、建さんも堂島Pもお二人のことが本当に大好きで大切で、家族みたいな大事な存在なんだなという気持ちがひしひしと伝わってきた。当然その気持ちはKinKiのお二人も同じだろう。これに関しては、文章であの雰囲気を伝えるのは本当に難しい。世のライターさんが如何に凄いかがよく分かる。

親戚の集まりと言えば、今回MCの中ではジャニフェスやカウコンなどのジャニーズ関連の話もたくさんあったのだが、その時のお二人が本当に『身内』という感じで親戚の家の話を聞いているみたいな感覚だったのを覚えている。それもそうだろうと思う。もう肉親と過ごした時間よりも長くジャニーズ事務所に、そしてこの芸能界に身を置いて彼等は過ごしているのだから。まあ、お二人がお互いをどういう風に思っているかなんて結局は当人同士にしか分からないのでこれ以上こんなことを考えるのは野暮でしかないが、ただその空間がたまらなく愛おしかったのは間違いない。

 

お誕生日おめでとうムードになった流れで7曲目Happy Happy Greetingが歌われた。

ハピグリはリズムに合わせてペンラがゆらゆら揺れていて可愛かった。ペンラがない私は手拍子でしか参加できないので申し訳ない気持ちになっていたが、幸いにも私の席付近はペンラよりも手拍子が多めだったのでありがたかった。

どこからともなく手拍子が起こり、それに合わせるように自然とペンラが揺れる。「これがライブの醍醐味ってやつかあ。やっぱりDVDで見るのとは全然違う。会場に一体感が生まれてすごく楽しい!!」と思うと同時に、コロナ前はそれに加えてみんなで一緒に歌ったりもしていたんだなと考えてしまい少し寂しい気持ちにもなった。彼等とまた一緒に歌えるようになるためにもコロナには一刻も早く終息してもらわないと困る。

 

ハピグリの後に続けて歌われたのは皆様お待ちかねの「愛のかたまり」だった。モニターが変わり廃墟になったチャペルのような映像が出てくると、映像に溶け込むようにピアノと二人の歌声がドーム全体に響く。今回のイントロは俗に言う"心中Ver."だった気がするのだが(この辺りの記憶が曖昧で申し訳ない)ピアノが奏でる荘厳なメロディがより一層その雰囲気を醸し出しており「本当にこの世界には二人以外おらんのか……?!」と思わせるほどの没入感があった。

そしてなにより、二人はユニゾンがバチッとハマると本当に綺麗なひとつの声になる。「愛のかたまり」ではこれがかなり顕著に感じられた。これがが所謂"KinKi Kidsという人格・声"というものなのか。

 

壮大な「愛のかたまり」の後はMCをはさんでfamily〜ひとつになること〜」を歌い、またMCを少し入れた後一度二人はステージからはけた。光一さんが「もう最後の方ですからね、あとチョロチョロっと歌って終わりですので」と言われた時の会場の「ええ????!????!もう??!???!?」感はすごかった。当然私も同じ気持ちだ。

ステージからはけた後、園田さんのピアノ演奏(曲は確か薄荷キャンディーだった)と共にモニターには2つの星のようなものがヒュンヒュン飛び回る映像が出てきた。星が重なると光に変わり、"1997"という文字に変わった。これは彼等のデビューした年を表している。その後は、その年に出演したライブ・テレビ番組・MVなど彼等がこれまで歩んできた軌跡を振り返りながらスクラップブックをめくるような形で次々と映し出された。

段々と会場からは鼻を啜る音が聞こえ始めた。確かにこれは彼等がデビューした頃、デビューする前から応援しているファンからしたら涙なしには見られないものだと思う。これは彼等の軌跡であるのと同時に、この頃からずっと応援し続けていたファンの軌跡でもあるのだから。

私は1997の数字が出た時、自分の生まれた年だなとすぐに思った。私は彼等と一緒に歳をとり、彼等が20周年を迎えた年に成人し、今年25歳になろうとしている。彼等と一緒に自分も育ってきたのだと思うとなんだか凄く嬉しくて、勝手に涙が溢れた。

 

映像はクライマックスに差し掛かっていた。いよいよ最新曲のMVまで出てきた辺りで「ああ ついにここまできたかあ。25年って長いようで意外とあっという間だったのかもなあ。自分が知らない間に25歳になってるんだからそりゃそうか」と思っていると光に包まれて最新アー写?のようなものが出てきた。着物をアレンジしたような厳かな衣装に身を包んだお二人はとても美しく、25周年のスタートにピッタリな姿だ。

するとその衣装を着たお二人がステージから出てくると、園田さんの演奏が始まる。10曲目は「Anniversary」だった。イントロが流れた瞬間既に崩壊していた涙腺がまた崩壊してしまった。

紡がれる音のひとつひとつをとても丁寧に、大切にしながら歌う姿に涙が止まらずステージが滲んで二人が見えない。「ああ、Anniversary……なんていい歌なんだ。"星の数ほどいる人の中で僕は 偶然あの日出会い恋に落ちたよ"だなんて、まるで私が彼等に堕ちてしまった時のことを表しているようじゃないか……ありがとうSatomi先生……ありがとう織田哲郎先生……」と、一人で浮かれまくっているといきなり音がぶわあっと大きくなった。

何事かと思った瞬間、今まで映像を映していたモニターが真っ二つに開かれる。その先にはオーケストラの方々。席が遠かったのもあり総勢何名いらっしゃったのかは確認できなかったが、いやそういうことを言いたいのではない。

私は最初のMCでしっかりと聞いていたのだ。「今日のコンサートはピアノ1本です!」と。

上記の通り、今回は急遽の開催だったということもあり、大掛かりな演出は難しいということは分かっていた。だからMCでそう言われた時も何の違和感も感じなかった。当たり前だ。開催してくれるだけでも本当にありがたいくらいなのだ。

ただ。ただ、私は我儘なオタクだから、どうしてもオーケストラやバンドメンバーさんの演出ありきのコンサートも見てみたかったなあと心の中で少し思ってしまっていたのだ。

 

完全に嵌められてしまった。

なんてことだ。最後にこんな隠し球を用意していたとは。というか見透かされていたのか?

 

状況が掴めないまま曲は最後の大サビの部分に入った。二人が歌い出すとそれに続くようにオーケストラの音圧が耳にビリビリと響いてくる。たくさんの人が一斉に音を奏でるとこんなにも大きくて厚みのある音になるとは思わなかった。そして、こんなに音が重なっても音割れのようなものを一切感じないというあたり、やはりKinKiの音響は頭一つ抜けてるということが分かる気がする。

 

曲が終わった後のあの鳴り止まない拍手が全てを物語っていた。身体の底から感情が溢れて止まらない。叫べるもんなら叫びたい。

ぼっち参戦だったのでなんとか今回は堪えられたが仮に知り合いや気の知れた人が近くにいたら秒でブレーキが壊れてたと思うので一人で良かったと思う。

 

そして畳み掛けるように流れたのは「Topaz Love」。これ以上オタクを泣かせてどうしろと言うのだ。

正直に言うとこの辺りから泣き過ぎてあまり記憶がない。ただ、ステージが宝石のプリズムを表しているかのようにキラキラと虹色に光っていて、光に照らされた二人がとても綺麗だったことはとりあえず覚えている。この合作曲は20周年イベントの中で作られた曲だ。私は映像でしか見たことがないので深くは言えないが、参戦した人達にとっては大切なものがたくさんつまった思い出の曲なのではないだろうか。それを踏まえた上で、フルオーケストラで演奏する曲目に選んでくれたことに二人の愛を強く感じた。

 

会場が温かい拍手に包まれる。

もうこれが最後の挨拶だった。本当に最後までお二人は"感謝"の言葉を仰っていた。開催に踏み切ってくれたドーム関係者の方々、会場を設営してくれたスタッフの方々、そして私達ファンに向けて。

断片的にしか覚えていないのが心苦しいが、「25周年も、その先も、どうか僕たちについてきてほしいと思う」という光一さんの言葉は絶対に忘れないし「優しくてやわらかくて、愛のある時間をみんなとたくさん過ごせたら」と優しい口調でお話された剛さんの姿はこれ以上ないくらい美しかった。

25円でCM出演企画もちょろっとその時話に出てきた(まだこの時点では情報解禁をして間もなかったのであまり詳細な表記はされていなかった)が、まさか作詩・作曲も二人一緒に行うとは思ってもいなかった。本当の意味での"二人の共同作業"ということだ。また顔がにやけてしまう。

 

最後の挨拶も終わり、ラストは「硝子の少年」で締めくくりだった。やはりオーケストラになると壮大さが尋常ではないくらい増す。あとレーザーの演出がめちゃめちゃカッコよかった。

曲が終わると二人は手を振りながらモニターの中に消えていった。去り際に剛さんが「たくさんの愛をありがとう」と仰っていたがたくさんの愛を貰ったのは私達の方だ。こんなに貰ってしまっていいのだろうかとMC中も歌唱中も思っていた。

楽しい時間ほどあっという間に終わってしまう。この時間が終わって欲しくなくて私はずっと拍手をしていた。

するとモニターにはメッセージが映し出された。

 

『どんな時も そばにいてくれてありがとう これからも 僕らの新しい時代を描いていきましょう 愛してる Be with you』

 

その後には直筆であろうお互いの名前が一緒に記されていた。

この時私は思った。このコンサートは自分達がデビューしてから、デビューする前からずっと応援してくれたファンへの感謝と、愛と、そしてこれからも自分達と共に歩んでほしいという願いを伝えることを一番の目的として開催されたコンサートだったのではないかと。他のコンサートはファンに向けての感謝の言葉がなかったと言いたい訳ではない。断じてそれはない。ただ、私はずっとKinKiのMCは"二人が私らの知らない話題で私らを放ったらかして楽しくお話している姿がオタクにとってのファンサ"という認識で生きてきたので、今回MCで浴びるほど感謝の言葉を頂いてしまったが嬉しい反面なんだか気恥ずかしくもあった。

だけど、このメッセージを見た時

「ああ。今日貴方達から貰ったたくさんの愛はちゃんと私達に『あげるためのもの』として受け取っていいんだ。」

そう思うと、この日お二人から発せられた言葉のひとつひとつが胸にじわじわと馴染んでいき、それは全部涙に変わっていった。

 

化粧が崩れるほど泣いているとその瞬間、会場がパッと明るくなりコンサートの終わりを告げる規制退場のアナウンスが流れた。夢の世界から現実に戻ってきたような感覚だった。寂しくないかと言えば嘘だ。正直に言うとアンコールを期待していたので照明が点いた時は「ああーー今回は無しか……」となったものだ。

だけど、モニターの「Be with you」の文字は退場するまで消えずにずっと残っていたので悲しくはなかった。むしろ、ここからがKinKi Kidsの25周年の始まりなのだと思うと楽しみで仕方なかった。

帰り際にツイッターを見ると早速レポツイがたくさん載っていたので家に帰るまでコンサート気分を味わうことが出来た。スマホ派かケータイ派かのくだりやサラッとしか書けなかった曲目のことなど、まだまだ書き起こしたい話題はたくさんあるがとりあえずここまでにしておかないと終わりが全く見えなくなるのでここで終わりにしておく。丁度今回のコンサートの模様がダイジェストでYouTubeに公開されたのでそちらを是非見て頂きたい。ちなみに私は休憩中にうっかり見てしまい無事午後の仕事に影響されてしまった。

 

総括するとやっぱり私はKinKi Kidsのことが本当に大好きで、一度きりの人生の中で貴方達を知ることが出来たこと、貴方達に出会えたこと、貴方達をこんなにも大好きになれたことは一生の誇りとして生きていくと、そう改めて思うことが出来たコンサートだった。

人生で初めてのコンサートをこのコンサートに、彼等に捧げることができて本当に良かった。

2022年もその先も、たくさんの幸せが彼等に訪れるように願う。

 

※2/15 追記 Anniversaryの作詞家は松本隆さんじゃなくてSatomiさんですね……大変失礼いたしました。